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2023年01月31日 公開

 

近況 
深川雅文

 

春。2022年は、抽象絵画の誕生の歴史に一石を投じた、スウェーデンの画家、ヒルマ・アフ・クリントについて考えることで幕が開けた。4月に上映された彼女についてのドキュメンタリー映画「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」(https://trenova.jp/hilma/)のパンフレットにエッセイ「ヒルマの波紋」を寄稿するためである。20世紀モダニズムの再考の必要性を強く感じた。上映初日、横浜美術館館長の蔵屋美香さんとアフタートークを行った。
夏。本年は、2012年に故三宅一生さんと美術史家の青柳正規さんが「国立デザイン美術館」創設を発起して10年となる節目の年。アジアでは香港に建築・デザインにも力を入れた総合的なミュージアム、M+が2021年11月に、そして日本国内では屈指のデザインコレクションを有する大阪中之島美術館が今年2月に開館。昨年の短信で、こうした状況を踏まえて、日本でのデザインミュージアムのあり方についての議論の場を広げていくべきではないかと記した。「隗より始めよ」ではないが、そうした場の実現を巡って自身が所属するデザイン史学研究会に相談するなかで、夏、7月に神奈川大学人文学研究所主催でシンポジウム「デザインミュージアムのヴィジョン」(共同企画: デザイン史学研究会)の開催が決定し、筆者を含めた5名のパネラーによる発表とパネルディスカッションが行われた(https://artscape.jp/exhibition/art-flash-news/2022/10177260_21841.html)。「国立デザインミュージアム」への道は遥かだが、実現に向けて夢見ていきたい。
秋。かつて私が企画した展覧会にも参加していただいた写真家、吉村朗(1959-2012)の没後10年を迎え、展覧会「吉村朗の眼」が作家の母校、東京綜合写真専門学校のギャラリーで開催された(https://gallery.tcp.ac.jp/eyes-of-akira-yoshimura/)。キュレーションならびに会期中に刊行される同名の写真集(さいはて社)の編者を担当。最後に、1973年に写真評論家の重森弘淹によって創刊され7号(1974年)まで続いた批評誌『写真批評』(東京綜合写真専門学校出版局)の復刊のプロジェクトを進めている(2023年1月に刊行予定)。編集は、評論家の調文明さん、きりとりめでるさんを中核に、私は監修として参加。美術評論の場を拡大していきたい。

 

『美術評論家連盟会報』23号