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2022年01月22日 公開

追悼 高橋亨さま-関西戦後美術の記録と評論

中塚宏行

 

 1927年神戸生まれ、52年東京大学文学部美学美術史学科卒、52年―64年産経新聞大阪本社記者、54年司馬遼太郎から美術記者を引継ぐ、具体初期の55年「真夏の太陽にいどむ野外モダンアート実験展」、56年「第2 回野外具体美術展」を取材、64年社会部への異動話が出て退社、66年大阪成蹊女子短期大学助教授、71年大阪芸術大学教授、77年―79年村松寛の後任として大阪府民ギャラリー館長、79年―86年大阪府立現代美術センター館長、90年徳島県立近代美術館長、92年大阪芸術大学美術学科長、98年同大学名誉教授、03年滋賀県立近代美術館長、2021年8月19日没93歳。産経の記者時代から関西(京阪神)の美術界をくまなく取材し新聞、雑誌などに執筆した。76年大阪府民ギャラリーで、「具体」解散後の公立館で最初の「具体美術の18年」展が開催(11月2日―14日)、総括的な記録集も出版された。展覧会や記録集は高橋亨と吉田稔郎ら「具体」の元メンバーが行い、高橋は「具体論―愛をこめて」を執筆した。編集で用いられた「具体」資料は、高橋、吉田らによって現代美術センターに預けられ、その後、「具体」研究者らがその資料調査に訪れ、芦屋市美術博物館の一連の「具体研究」のために移管、活用された後、大阪大学総合学術博物館を経て、現在は大阪中之島美術館に移された。77年―86年現代美術センター館長在任中の主な展覧会は、吉原治良賞美術コンクール、現代版画コンクール、今日の作家シリーズでは、前田藤四郎、泉茂、福岡道雄、木村光佑、井田照一、儀間比呂志、山本圭吾、植松奎二、今村輝久、宮崎豊治、飯村隆彦、松谷武判、木村秀樹、奥田善巳、福島敬恭、松井憲作、中井克己、河口龍夫、村岡三郎、企画展では、写壇の巨星 安井仲治、中山岩太、小石清の三人展、大阪中心に見る陶芸新地図、現美センター開館記念展イメージの現代、絵画の方向、画廊の視点、ビデオアンデパンダンなど。
 上記に名が出てくる村松寛(1912―1988)は朝日新聞の学芸部、企画部の美術記者で、退職後は大阪芸術大学教授となった、高橋より15歳上の先輩である。村松寛と高橋亨、両者のキャリアには共通点も多く、仕事の上でも、精神的な結びつきも強かったと思われる。兵庫近美の元学芸課長の増田洋は高橋の中学の4年後輩だったという。
 また最晩年のインタビュー記事が大阪中之島美術館のオーラルヒストリーに掲載されている。あわせて参照していただきたい。
https://nakka-art.jp/wp1/PDF_ORAL/07_takahashi.pdf

『美術評論家連盟会報』22号