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2022年01月22日 公開

特集について

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 Covid-19のパンデミックが、誰が呼んだか「コロナ禍」と呼ばれるようになって、少なくない時間が経つ。「3密を避ける」という独特の術語のもとに、もっとも損なわれたものは、新たな出会いや、公式に設定された会合の「余白」であった。「のべつまくなしにおしゃべりすること」は社会の基本単位における基礎通貨のような、植物を育てるその前の、土が耕されるようなものであり(ソーシャルメディアがその役割の一部を強力に代替し、新しい力場として作用し始めていることは脇に置きつつ)、それが失われてしまうことが、新たな作品の登場や、新たな作品への批評の言葉を、やはり貧しくする方向に作用しているだろう。
 今回の特集テーマは「批評と、」と称して、会員相互の対談やインタビューという方法論を中心とした。会報の役割には社会への発信とともに、実際には「会員相互の交流を深める」という機能があり(短信や追悼文が存在しているのはそういった機能の最たる例だが)、この状況において、その役割は「自覚的に」「あえて」機能させなければ、むしろその先をも貧しくするのではという感覚から選ばれたものだ。
 美術評論家連盟の会員には、必ずしも「評論家」の肩書きが先頭についているのではなく、研究者、制作者、学芸員、ジャーナリストなどが並ぶ。それらの専門性の差分から今一度批評を考えることをテーマとした。

『美術評論家連盟会報』22号