4-4

2022年01月24日 公開

千葉成夫

別無工夫/別無無工夫

 

 2020年の晩秋、最初の書き下ろしに少し書き加えて文庫本で出版という依頼を受けた。それから、ほとんどずっと「緊急事態」や「マンボウ」(自宅蟄居という強いられた「閑暇」)の中で、増補部分の執筆、全体の校正等を進めた。そして2021年9月に刊行された(『増補 現代美術逸脱史 1945~1985』、ちくま学芸文庫)。1986年に刊行した部分は字句訂正にとどめ、「増補」では、80年代前半までに方向性が明確になった作家達のなかから数人だけ選んで、その後の展開を略記した。それ以降の新しい世代については基本的には触れなかった。年寄りには無理だしねえ。
 増補の「あとがき」で地球の生命体の絶滅に触れたのだが、校正の最中の8月、グリーンランドの最高地点(標高3216m)での降雨が報道された。特に15日は降雨量が平年1日の平均の7倍に上ったという。別に、気温は2070年(僕の二人の孫が還暦間近の年頃になる!)迄に7.5℃上昇し、それは地球表面の19%に拡大し、結果35億人に影響が及ぶという報告もある。更に、年間800万トン(2年前)に及ぶ海洋ゴミは2050年には魚類の総量を越えるという研究もある!まだある。ドローン兵器は、人間の指令を受けなくても「自身」で「敵」だか「的」を判断して攻撃する事が既に可能になっているらしい。怖ろしい。
 「技術(アルス)」はどんどん長けていくが、それは、それ自体としては「心・身体・精神」とは無縁に進む。ところでこの状況下、否応なく展覧会から足が遠ざけられてしまった我が「フットワーク」は減衰の一途だ。かといって「リモート」ではどうにもならない。絵画や彫刻は実物を見ないと成り立たない体験だ。でもまあ、今時、美術がどうなろうがあまり関係ないか。「娯楽(エンターテインメント)」の片隅にでも収まれば御の字、ってか!

『美術評論家連盟会報』22号