「アーツ前橋における借用作品の紛失及び前橋市の対応について」の撤回とお詫び

[共同意見,ニュース]  2021年05月31日 公開

美術評論家連盟は、2021年5月2日付で「アーツ前橋における借用作品の紛失及び前橋市の対応について」と題した意見書を山本龍前橋市長に送付しました。その後、情報公開請求によって前橋市より提供された作品紛失調査に関する資料を入手し、同資料及び、本連盟に内外から寄せられた複数の情報をもとに改めて本件について検討したところ、作品紛失や著作権者等への報告の遅れに関して、アーツ前橋作品紛失委員会による調査報告書の内容がおおむね妥当であり、作品紛失そのものの原因に関しても、未だ不明点が残っているとはいえ、前橋市が現状において可能な限りの調査を行なったことを確認しました。そのため、5月30日付で、山本市長宛に送付した意見書をお詫びと共に撤回しました。

不十分な調査に基づいて意見書を作成し、拙速に送付したことは、前橋市の関係者、及び、上記の問題に関して耐えがたい思いをされてきた方々にご心痛をおかけすることとなりました。ここに深くお詫び申し上げます。

本連盟の会員でもある住友文彦前館長の言動には、紛失を隠蔽する根拠を美術専門家の判断として主張するものがありますが、本連盟としては、美術館員及び評論家としての職業倫理に悖るものと考えます。

本連盟は今後、社会に向けて意見を表明する際の内部手続きについて見直すと共に、アーツ前橋における作品紛失や運営体制の問題について、「アーツ前橋あり方検討委員会」の動向も含め、引き続き注視します。また、前館長、及び、作品紛失隠蔽との関連が疑われる担当学芸員の言動については、今後も情報収集に努めつつ慎重に議論を重ね、必要に応じて本連盟の見解を示すことも検討しています。