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2022年01月22日 公開

デザイン展のキュレーション

深川雅文

 

 バウハウス100周年を祝うために進めてきたbauhaus100 japanプロジェクトは2020年内で終了。企画者として関わった「きたれ、バウハウス」展は、ジャンル的には当然、デザインに深く関わるものであった。その後、デザインに関するキュレーションはしばらくないかなと思っていたが、2021年の春から新たなデザイン展のキュレーションに携わることになった。国際交流基金が世界巡回するデザイン展「現代日本のデザイン100選」である。

 日本の現代のプロダクションデザインを約100点を選定してわが国のデザイン・スケープを紹介するという趣旨である。海外巡回展なのでなかなか国内では知られることがないが、この展覧会の第一弾は2004年に企画され、初回からキュレーターチームに参加している。世界各地で人気があり、その後2013年に第2弾にバージョンアップして世界を巡回している (https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/traveling/n_design_100.html)。開催国はアジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸で約50カ国にのぼる。第2弾から約10年経つことで、第3弾の展覧会を企画したいということで再々度キュレーションに参加することになった。

 デザインを選んで展覧会を構成するという考えの原点のひとつは、MoMAの「グッドデザイン展」(1950年)を企画したエドガー・カウフマン・Jrの一連の仕事にある。その著書『近代デザインとは何か?』(生田勉訳、美術出版社、1953年)で彼は述べている。「われわれが選択するものを通じて、デザインはわれわれ自身の表現となる」(同書7貢) これは私にとって、デザインに関するキュレーションを行う際の座右の銘である。2004年から2021年まで3回に渡る日本のプロダクトデザインの選定結果を通観すると、日本におけるデザイン・スケープの変容が自ずと見えてくる。それは、時代ごとの「われわれ自身」の表現でもある。

 デザインをミュージアムの領域にいかに組み込んでいくのかという課題、そして日本でのデザインミュージアムのあり方についての議論は(2012年に三宅一生が国立デザイン美術館の設立に声をあげたことが思い出されるが)、わが国ではまだ充分な検討がなされていないように思われる。そうした議論の場を広げることを夢見ている。

『美術評論家連盟会報』22号