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2020年11月14日 公開

bauhaus100 japan プロジェクトから見えてきたもの  

深川雅文

 

 2019年はバウハウス開校100年にあたり、日本でバウハウスを祝うべく、2017年に有志と「バウハウス100周年委員会」によるbauhaus100 japan プロジェクトを立ち上げた。企画監修者として関わった巡回展「きたれ、バウハウス」はその中核企画で、2019年夏に新潟市美術館で開幕後、三つの公立美術館を経て、途中コロナ禍による短い公開中断がありながらも2020年夏に東京ステーションギャラリーでフィナーレを迎えることができ、想像を超える反響をいただいた。また、巡回展だけでなくバウハウスに関連する展覧会やイベントを「バウハウスの星座」と位置づけネットワークとして紹介した。その数は54に上る(「バウハウスの星座」についてはこちらをご覧いただきたい。URL: http://www.bauhaus.ac/bauhaus100/constellation)。
 海外からの借用無しでバウハウスの全体像を描くことを可能にしたのはここ30年の各美術館での国内コレクションの充実であった。また、「バウハウスの星座」として54もの関連イベントが各地の美術館を中心に実施されたこともその豊かさを示している。例えば、「バウハウスの星座」にはバウハウスのマイスターであったパウル・クレーの所蔵作品を含む展覧会が、「きたれ、バウハウス」を含め9つを数える。奇しくもバウハウス100年にあたる2019年にアーティゾン美術館が収集したクレー作品の展示を始め、東京国立近代美術館、広島県立美術館、宇都宮美術館、新潟市美術館、富山県美術館、セゾン現代美術館などでバウハウスに関連するクレー作品の公開があった。
 この体験から、筆者には、展覧会のテーマや作家によっては、国内コレクションによって充実した企画を可能とする状況が醸成されているのではないかという希望的な光景が微かに見えてきた。その実現のためには、さらなる研究・調査とともに、各コレクションの情報共有のシステムの整備と充実が不可欠であろう。美術館予算の低減とコロナ禍で海外からの借用が難しくなっている状況の中で、国内のコレクションの重要性を再発見したプロジェクトでもあった。

 

bauhaus100japan 公式WEBサイト

http://www.bauhaus.ac/bauhaus100/

 

『美術評論家連盟会報』21号