美術評論家連盟 2018年度シンポジウム「事物の権利、作品の生」

[ニュース,イベント]  2018年10月16日 公開

美術評論家連盟ではシンポジウム「事物の権利、作品の生」を開催します。

 

1.趣旨
東京大学中央食堂に展示されていた宇佐美圭司による記念碑的絵画《きずな》が廃棄されたというニュースは、社会に大きな衝撃を与えました。そこで毀損されたものは、著作者である作者の権利のみならず、作品の権利であり、作品の生命でした。またそこで抑圧され、破壊されたのは、作品とよばれる物体だけではなく、作品に内在する知的体系(歴史・行為・魂の集積)であり、そして失われた未来の時間に孕まれた、作品が生み出し私たちに与えたはずの、さまざまな経験や思考=批評でもあったはずです。
であれば、私たちは、この出来事をきっかけとして、改めて作品それ自体の「生」を語り、ときに数万年の時を超えて持続する事物それ自体の権利について思考するべきではないでしょうか。
もちろん、常識的には生命を持たない事物に生や権利を見ることは、人間の欺瞞かもしれません。半分はそうでしょう。しかし、事物や実在についての活発な哲学的議論が交わされ、人工生命や人工知能の進展により生命の定義が著しく不明瞭になった現在、「作品」と呼ばれるオブジェクトの主体性や生について、改めて考えてみるべきではないでしょうか。本シンポジウムは、人間的な生と深く関わりつつ、それ自体としての生を生きる芸術的オブジェクトの存在論を議論することを目的に開催します。

 

2.日時
2018年11月11日(日)14:00~17:30(開場13:30)

 

3.会場
東京藝術大学 美術学部 中央棟 第一講義室(東京都台東区上野公園12-8)

 

4.アクセス
JR上野駅(公園口)・鴬谷駅より徒歩10分
東京メトロ 銀座線・日比谷線 上野駅より徒歩15分、千代田線 根津駅より徒歩10分
京成電鉄 京成上野駅より徒歩15分 (駐車場はございません)

 

5.内容
(1)前半:発表(5名・各20分)

[発表者](50音順、敬称略)

池野絢子
1981年生まれ。専門はイタリア近現代美術。京都造形芸術大学大学院芸術研究科(通信教育)准教授。単著に『アルテ・ポーヴェラ──戦後イタリアにおける芸術・生・政治』(2016年)、共著に『引込線2017』(2017年)、分担執筆に『ジョルジョ・モランディの手紙』(2011年)、『教養のイタリア近現代史』(2017年)など。

金井直
1968年生まれ。美術史研究。信州大学人文学部教員。元豊田市美術館学芸員。主な企画に「イメージの水位」(2004年)、「アルテ・ポーヴェラ」(2005年)、「Vanishing Points」(2007年)、共著に『彫刻の解剖学』(2010年)、『自然の鉛筆』(2016年)、『彫刻の問題』(2017年)など。あいちトリエンナーレ2016キュレーター。

蔵屋美香(美術評論家連盟 会員)
東京国立近代美術館企画課長。主な展覧会に「ヴィデオを待ちながら:映像、60年代から今日へ」(2009年、同館、三輪健仁と共同キュレーション)、「ぬぐ絵画―日本のヌード1880-1945」(2011-12年、同)、「高松次郎ミステリーズ」(2014-15年、同、保坂健二朗・桝田倫広と共同キュレーション)、「藤田嗣治、全所蔵作品展示。」(2015年、同)、「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」(2017-18年)など。第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館キュレーション(2013年、アーティスト:田中功起)。

沢山遼(美術評論家連盟 会員・シンポジウム実行委員長)
1982年生まれ。美術批評。主な論文に「ニューマンのパラドクス」(2017年)。「ウォーホルと時間」(2018年)。「都市の否定的なものたち ニューヨーク、東京、1972年」(2018年)、共著に『現代アート10講』(2017年)など。

星野太
1983年生まれ。専攻は美学、表象文化論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、金沢美術工芸大学講師。著書に『崇高の修辞学』(2017年)、『奥村雄樹──ジュン・ヤン』(2013年)、共著に『コンテンポラリー・アート・セオリー』(2013年)、『キュレーションの現在』(2015年)、『ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践』(2018年)、共訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で』(2016年)など。

(2)後半:パネルディスカッション

モデレーター:林道郎(美術評論家連盟 会員)
1959年生まれ。上智大学国際教養学部教授。主な著作に『静かに狂う眼差し』(2017年)、『死者とともに生きる』(2015年)、Natsuyuki Nakanishi (2014年)、Tadaaki Kuwayama (2014年)、“Tracing the Graphic in Postwar Japanese Art,” in Tokyo 1955-1970: A New Avant-Garde (2012年)、『絵画は二度死ぬ、あるいは死なない』(2003-9年)など。共編書に『シュルレアリスム美術を語るために』(鈴木雅雄と共著、2011年)、From Postwar to Postmodern: Art in Japan 1945-1989 (2012年)など。キュレーターとして「Cubism in Asia」(2005年、東京国立近代美術館―韓国国立現代美術館―シンガポール国立美術館の共同展)、「静かに狂う眼差し」(DIC川村記念美術館、2017年)などに関わる。美術批評誌『ART TRACE PRESS』(2010-)の編集および執筆を務める。

 

6.入場料 無料

 

7.定員  180名

 

8.申込  不要・当日先着順

 

9.主催  美術評論家連盟

 

10. 美術評論家連盟 2018年度シンポジウム実行委員会
沢山遼(委員長)、小勝禮子、前山裕司(いずれも美術評論家連盟会員)

 

11.お問合せ
美術評論家連盟 事務局 aicajpn@gmail.com(担当 山内舞子)

 

チラシはこちらよりご覧いただけます
AICA_Symposium_2018