地球の旅人  山脇一夫

2019年11月23日 公開

 久しぶりに美術館に招かれて講演をした。姫路市美術館で開催されていた「奇跡の芸術都市バルセロナ」展に際してのことである。私が招かれたのは1987年に私が「カタルニア賛歌―芸術の都バルセロナ」展を兵庫県立近代美術館などで開催したことによるものである。講演会の準備をしながら三十数年前の記憶が蘇ってきた。また久しぶりに聴衆を前にして話をすることは楽しかった。

 この一年はまた、「回想:セブン・アーチスツ-今日の日本美術展」(1990〜91年、アメリカ、メキシコで開催、2018年12月名古屋市美術館ニュース『アート・ペーパー』に掲載)や、「回想:スペインでの『具体-行為と絵画展』(1985〜86年スペイン国立現代美術館などで開催、『須田記念・視覚の現場』(2019年7月)に掲載)など後ろ向きの仕事が多かったが、次はぜひ前向きの企画がしたいと考えている。

 現在考えているのは、2005年に愛知県で開催された「愛・地球博」のその理念「地球の叡智」を美術展で実現することである。展覧会のタイトルは「地球の旅人Travellers on the earth」。具体的には、「自然の叡智」を具現化した現代美術の作品と世界の各地に今も残る民族美術の展示である。現代美術に関しては、アンディ・ゴールズワージー、デイヴィッド・ナッシュ、クリス・ドゥルーリー、ロジャー・アックリング、ホルスト・アンテス、アントニ・ゴームリー、エミリー・ウングワレー、新宮晋、河口龍夫、土屋公雄などが考えられる。民族美術について言えば、アメリカ・インディアンのカチーナ人形、アマゾン・インディアンを中心としたフェザー・アートなどがある。

 重要なのは現代美術と民族美術の垣根を取り払うこと。民族美術が現代美術よりも先端的な叡智を宿していると考え、それを現代の表現の指針にすることである。

 この企画の実現に向けて関係者に色々相談をしているが、今のところ入り口が見えない。どなたかお知恵をお借りできませんか。

 

『美術評論家連盟会報』20号